II.北朝鮮軍の外貨稼ぎの実態

1.外貨稼ぎの発端

 1960年代末から始まった。そのときには、群衆外貨稼ぎとして行い、人民軍隊内の全ての部隊に外貨稼ぎの課題が下達された。部隊が受ける地理的環境と実状に合わせて、木材伐採等、魚を捕まえ、外貨を稼ぐ部隊、松茸狩りやペクボンリョン(松の木の下に生じる松ヤニの塊)等、薬草を探して、外貨を稼ぐ部隊があり、軍団を始めとする一部部隊では、金鉱や銅鉱を開発し、外貨を稼いでいた。

 特戦部隊である第38航空陸戦旅団のようなところでは、1969年、平安北道球場郡にある露天炭坑を開発し、旅団の前に提起された外貨稼ぎの課題を遂行した。

 問題となったのは、その当時、軍隊内に専門貿易会社がなかったために民間貿易会社に外貨稼ぎの源泉を渡してやって、外貨を稼いだために軍隊が多くの損害を受けたことである。要するに、1970年代末までは、人民軍隊における外貨稼ぎ事業が整然とした組織体系がなく、部隊別に散漫と進行した。

2.専門外貨稼ぎ会社出現

 1970年代末までは、外貨稼ぎを専門とする部署は、武装装備輸出と輸入を専担する人民武力部15局、別名技術総局、牡丹商社の外になかった。

 人民武力部に初めて貿易会社が生まれたのは、戦闘訓練局である。訓練局では、戦闘訓練機材を外国から買うのに必要な外貨を自体で稼いで解決しようと、武力部長に提起して、専門外貨稼ぎ会社を組織した。この会社の責任者は、有名な歌手ワン・スボクの子供であった。

 ワン・スボクは、金日成が惜しんだ歌手であった。6.25戦争が起こる前に、大韓民国国防軍対北放送員を行っていた。持って憎らしく歌って放送したために、北朝鮮軍の偵察兵が分界線を越えてきて、放送局の便所に隠れて拉致してきたという。ワン・スボクの子供が外貨稼ぎを行い、非理事件が多く提起され、人民軍検察局において逮捕しようと提起したため、呉振宇が防いだという。その後、彼は、軍隊から除隊され、民間貿易会社で働いた。

 戦闘訓練局の外貨稼ぎ会社が始発となり、人民軍隊内の多くの部隊が外貨稼ぎ会社を組織し始め、軍団毎に25部が組織され、外貨稼ぎが始められた。当時、人民武力部では、外貨稼ぎ会社が増えるや、貿易専門一群がなかったために、多くの障害を感じていた。武力部は、外貨稼ぎ事業を専門にする貿易実務機関であるメボン貿易会社を組織し、会社幹部は、民間貿易機関から経験豊富な者を郡に入隊させてまかなった。現在、メボン貿易総会社副総社長であるキム・ヨンファン大佐、キム・ギルジュン大佐等は、党中央委員会直属貿易会社である大成総局において管掌していた者である。

 初期、メボン貿易会社を26部と呼んだ。メボン貿易会社の基本任務は、人民武力部直属局と軍団において収集した外貨稼ぎの源泉(貝類、魚類、薬草類、鉛、亜鉛等)を輸出して稼いだ金で、人民軍人が生活に必要な4大物資(豆、豆油、飼料用トウモロコシ、綿)を買うことだった。

 現在、北朝鮮軍には、メボン貿易総会社、ユンソン貿易会社、牡丹商社、タンプン貿易会社、チルソン貿易会社、ピロボン貿易会社、スジョン貿易会社、ヘバラキ貿易会社、テリョン貿易会社、フンソン貿易会社、ウンハス貿易会社等、40余社の会社がある。

3.外貨稼ぎ会社の組織及び運営体系

ア.外貨稼ぎ会社の組織形態

 外貨稼ぎ会社が収集の犬となるが、組織形態が全て異なる。一部の会社は、会社の規模が大きく、人員が多く、一部の会社は、4〜5名で構成されている会社もある。人民武力部において最大の会社は、メボン貿易総会社、ユンソン貿易会社、タンプン貿易会社、フンソン貿易会社等である。

 会社の特性により、一部の会社は、全員が将校で構成されている一方、一部の会社は、将校と民間人を配合しており、民間人だけで構成されている会社もある。

 軍では、原則的に北送在日帰国同胞を使ってはならない。何故かというと、彼らの中に韓国と日本から派遣された間諜が多いということである。しかし、金日成や金正日の特別の信任を受けている朝総連幹部の子息は例外である。実例として、タンプン貿易会社社長と空軍及び反航空司令部2月6日貿易会社社長は、前朝総連幹部ハン・イクスの子供として兄弟の間柄である。テプン貿易会社社長は、人民軍大佐であり、2月6日会社社長は、民間人の身分である。

 ユンソン貿易会社のようなものは、人民武力部後方総局直属貿易会社として、軍において規模が最大の会社である。会社の総人員が1,500人程度で、本部成員だけで90名程度である。会社には、組織計画部、合営部、輸出部、収入部、生産部、財政部等、9個の行政部があり、会社成員の党組織思想生活を指導する政治部、思想動向を監視する監視査察する保衛部がある。副部長以上幹部と政治部成員、保衛部成員は、全員が現役将校であり、その他の成員は、民間人である。会社指揮部は、社長、政治部長、副社長2名がいる。

 ユンソン貿易会社には、船舶会社、シンジン合作会社、牡丹峰スキダ会社、アジア東方合作会社等があり、輸出品生産基地がある。水産物輸出生産基地としては、咸鏡北道清津市、咸鏡南道新浦市、江原道元山市、平安南道温泉郡、黄海南道海州市、平安北道新義州市にあり、数十隻の漁船を持っている。

 合営部傘下に被服合営工場(1046工場)、温泉にタタミ輸出工場、海州に稲藁飼料輸出工場、南浦に鴨羽毛加工工場があり、海州市スデ里に金鉱山を持っている。会社にはまた、3,700t級の大成山号、ユンソン1・2・3号貿易船舶もある。

 貿易会社の任務が会社毎に異なる。メボン貿易総会社は、自己傘下に輸出品生産基地を直接持っており、各軍団から動員した外貨稼ぎ源泉を輸出してやり、その代価に利潤の3%を受ける方法で外貨稼ぎを行っている。軍団級部隊を代表する貿易実務機関と見ることができる。この外に、メボン貿易総会社は、人民武力部の指示により、軍人生活に必要な4大物資を輸入する事業を行う。

 フンソン貿易会社は、人民武力部25局傘下の貿易会社として、銅、鉛、亜鉛、鋼板等を輸出し、自動車、掘削機等、鉱山に必要な輪転機材を輸入する任務を遂行する。ユンソン貿易会社は、水産物と稲藁飼料、被服を合営生産及び輸出し、飼料用トウモロコシ、農事用ビニールハウス、軍服生産用綿を輸入する。2月6日貿易会社は、空軍及び反航空司令部貿易会社として、外貨を稼ぎ、航空石油等の空軍に必要な物資を輸入する。1年に、日本に約4万余tの稲藁飼料を輸出し、多くの外貨を稼いでいる。人員が5〜7名に過ぎない小さな会社は、主として中継貿易の方法で外貨稼ぎを行う。日本産中古乗用車、冷蔵庫、カラーTV等を中国とロシアに売り、外貨を稼ぐ。一部の会社では、ロシアン・マフィア組織と手を結び、軍用ヘリ、戦車等の軍需物資を買い、第3国に売り渡す形式で金を稼いでいる。

 年間、人民軍隊の外貨稼ぎ課題は、1億ドルである。ユンソン貿易会社の場合、10分の1に該当する1千万ドルを稼がなければならない。しかし、武力部の全実績を見れば、毎年、米貨3千万〜4千万ドル程度に過ぎない。軍隊内の貿易会社は、民間銀行に口座を開設できず、ただ武力部署族の金星銀行にだけ口座を置くことができる。この銀行は、中国広州とマカオに支所を置いている。軍内の全ての貿易会社は、この銀行にだけ口座を開設することができが、この秩序を絶対に守っているわけではないのが実状である。何故かというと、この銀行に金を置けば、非資金を造成することができず、いつでも自由に金を引き出すことができない。そのためにほぼ全ての会社が2重口座を持っている。即ち、金星銀行と自分が信頼できる民間銀行に置いている。

イ.運営体系

 外貨稼ぎ会社に対する運営体系は、誰が武力部長になるかにより、異なるのが慣例である。1986年までは、メボン貿易会社が軍隊内の全ての貿易会社の事業を総括する体系であった。1987年、総参謀長呉克烈が人民武力部長の代理任務を遂行すると、武力部の機構体系を改編し、各個の総局を作った。このとき、金、銀、銅生産と輸出を専担していた第25局を総局に昇格させ、メボン貿易会社を始めとし、軍内の全ての外貨稼ぎ会社が25総局の指示を受けるようになった。そして、総局長には、人民武力部副部長李ビョンウク大将を任命した。

 1989年、呉克烈が軍から押し出されるや、呉振宇は、呉克烈が改編していた機構を再び取り替えた。結果、25総局は、25局となり、輸出入業務の権限を剥奪され、有色金属生産のみを担当させた。輸出輸入権限がメボン貿易会社に渡され、総貿易会社とされ、再び軍隊内の全ての外貨稼ぎを掌握統制することとなった。

 時が過ぎ、メボン貿易総会社が持って権勢を振るい、横暴を行うことが提起され、ユンソン貿易会社のように規模が大きな外貨稼ぎ会社が出現し、メボン貿易会社の意見衝突が生じ始めた。特に、メボンがワク(輸出許可証)を独占し、自分と利害関係がある会社にだけ利得を与え、他の会社には、不利益を与える偏重が現れた。こうなると、多くの外貨稼ぎ会社がメボンを通さずに、民間貿易会社との連係を持って、輸出することになり、利潤を見るのは、結局、民間貿易会社であった。

 このような不合理な事業体系を解決しなければならないという意見が高まり始めた。あちこちで、民間貿易会社との闇取引関係が深刻化し、稼ぎ出した外貨を国家に全て返納せず、横領する等、各種非理が深刻化した問題も提起された。

 総政治局を通して、このような問題が金正日に報告されるや、1995年2月、金正日が党中央委員会軍事部に人民軍隊の外貨稼ぎ全般実態を把握し、必要な対策を立てることを指示した。党中央委員会軍事部は、2ヶ月間、武力部所属の外貨稼ぎ機関の事業体系と外貨稼ぎ実績等を把握し、機構体系を新たに改編した。実績が不振な会社はなくされ、統廃合し、メボン貿易総会社が軍隊内の全ての貿易会社を掌握、統制していた機能を廃止して、人民武力部に外貨稼ぎ会社を掌握指揮する専門行政機構である44部を、軍団級部隊には、34部を組織した。

 44部は、武力部副部長李ビョンウク大将の指示を受け、人民軍全体の外貨稼ぎ計画を立てて、各貿易会社に下達し、その執行状況を掌握統制し、実績評価を行わせた。また、会社毎の輸出及び輸入品目を規定し、ワクを配当することとなった。44部自体が専門外貨稼ぎを行う実務機関ではないが、それらを指導する行政機関であるために、会社間に相互間のより多くの利益が見られたり、損害を見たりしていた複雑な問題がさらに提起された。
 

<以前の北朝鮮軍の外貨稼ぎ機構体系>
 

bullet人民武力部
bulletメボン貿易総会社
bullet人民武力部各局所属会社、軍団所属会社

※人民武力部各局会社を別名総参謀部局会社という。
 

<新たに改編された北朝鮮軍の外貨稼ぎ機構体系>
 

bullet人民武力部
bullet44部
bulletメボン貿易総会社、後方総局第34部、空軍・海軍司令部第34部、武力部各局所属貿易会社、軍団34部貿易会社、外貨稼ぎ部隊

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最終更新日:2003/05/01

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